おひや
益田ミリ「言えないコトバ」は、
“極私的な抵抗があって口に出せない”単語のエッセイ。
たとえば「おひや」。
ただの水なのに、場所によって呼び名を変える。
変えることにとまどわずにいられない私。
わはは。
おれ自身は「おひや」は使うけど、気持ちはよーくわかる。
「おあいそ」「チェック」。そうそう、おれも使えない。
益田嬢が使うのは「お会計」。おれは「お勘定」だ。
ちょっと驚いたのが、肉の焼き方
レア・ミディアム・ウェルダンが
いかにも背伸びしているようで恥ずかしく、
できるだけ周囲の人々に聞こえぬよう、
あのぅ、よく焼いてください‥‥。
という話。あーあー。そーかも。
いま想像しての話だが、おれも「ミディアムレア」には
いっしゅん恥ずかしい気持ちがよぎりそうだ。
そこまで細かく刻んで注文するおれってなによ、と。
家族回りの言葉にも共感。
他人に対して自分の身内を、
「わたしのおじいちゃんが」とは、さすがに言わないが、
でも「祖父・祖母」を使うときには、いつもかるーく緊張してしまう。
うんうん。初対面なら「祖父・祖母」を使うけど
2、3回会ってまあまあな距離感の相手には、おれ、
「うちの おーばばが」な、言い方をしてるなあ、そういえば。
「おふくろ」も、母親当人に向かってはもとより、
他人にも「うちのおふくろが」とも言えないなあ。
※
エッセイひとネタ目の冒頭に
口に出しているコトバよりも、あえて口に出してないコトバのほうが、
その人物を知ることができるんじゃないだろうか?
とあったけど。その、とおりよね。
※
牛丼屋での「つゆダクで」を、一度ためそか思いつつ、いまだ言ったことがない。おれ。
これだけ定着しても、
メニューにないものを頼む自分 に、抵抗があるのだ。