あかんたれあれたんかあ
島田陽子の「大阪ことばあそびうた」(1986年)所収の
各行がそれぞれ回文になっている詩「あかんたれ」は、
あかんたれほれたんかあ
で始まって。2行目で こがれて、3行目で ふられて、最後の4行目がこの、
あかんたれあれたんかあ
だ。あかんたれ(弱虫)へのおおらかな愛情が伝わってきて、ええなあ。
島田氏は、随筆集「うたと遊べば」で、この「あかんたれ」の言葉単体にふれている。曰く。
「あかんたれ」とは意気地なし、弱虫をいう大阪弁だが、いじけた感じがないのは
AKANTAREと、A音が多いせいだろう。
だめなやつ、と言いながら、あきれながら、許してる。
そんな響きがこの一節にはある。
「あかんたれ」もそうだけど、
この詩集の多くの詩がオールひらがなで書かれているが、
それは「こども向き」であることを意味しない。
同じく「うたと遊べば」の中で、島田氏は谷川俊太郎の
「ことばあそびうた」(かっぱ らっぱ かっぱらった〜の詩集)について、こう書いている。
漢字まじりで書くと、すぐに意味は理解されるが音の大切さは忘れられる。
そのための平仮名書きである。
勉強させていただきました。
■大阪弁の音楽的ともいえる美しいひびきはよく知られているように、
「ん」「や」「ね」「な」「わ」などを多用することから生まれている。
(島田陽子「方言詩の世界」)