失笑してみせる
雫井脩介「犯人に告ぐ」(2004)を読んでいて、
失笑 したり、されたりするシーンが何度かでてきて、
なんか、うすく違和感を感じてたのだ。が、
最後のほうにでてくる
「嵌められて仕方なく言ってるわけじゃない」
そう言って曾根が失笑してみせると、
巻島も失笑で返してきた。
の くだりで
あ、失笑の「思わずする」感じじゃなく、
わざとする「苦笑」に近い使いかた、ということかと気づく。
うそ。
新明解の
[失笑]あきれた余り、思わず笑ってしまうこと。
[侮蔑を含意する]
を引いて、やっと気づきました。
※
「犯人に告ぐ」。買っておったらかしてたものを、
先般テレビでやってた映画を見たあとに読んでみた。
犯人はわかってるのに、読めるものだなー。
むしろ、キャスティングをテレビのそれにはめて読めるし、
説明書きを飛ばし読みできて、いい感じ(失礼!)。
主人公が記者会見で失言するシーン、
原作の緊迫感にひきこまれる。
■(子供の死体を現場で確認した際の思い)
殺人事件が人の世に付き物だとしても、
死体はもっと大きくなくてはいけない。
■「だからね、巻島さん、犯人を怖がっちゃいけませんよ。
ただの人の子なんです。富岡のように自分の醜さに
気づいてないやつが悪あがきしてるだけでね、みんな、
おっかあの腹から生まれた人の子ですよ」
(以上「犯人に告ぐ」)