ラッキーマン
パーキンソン病を7年間ふせて俳優を続けたのちに公表した、
マイケル・J・フォックスの自伝タイトル(2003年刊)。
その意味は、
この病気にならなかったら、自分がこの十年近く歩んできた心豊かな深みのある人生は送れなかった。
ハリウッドのスターとして有頂天になっていた病気以前の自分には決して戻りたいとは思わない。
この病気のおかげで、ぼくは今のような自分になれたのだ。だから自分のことを
幸運な男(ラッキーマン)だと思うのだ、と。(訳者あとがきより)
今の境遇やイメージと“真逆の真実”なタイトル(ex.高田延彦の「泣き虫」)なのだけど、
いや、今の自分をラッキーマンと呼べるまでの、自分と、家族と、仕事と、世間に、
まっすぐ向き合った過程を丹念にたどった好著だった。
発病当初はたとえば、パーキンソン病に罹患したことの意味を無理に探そうとして
ぼくのパーキンソン病は今までのつけが回ってきた事を表している。仕返しなのだ。
そんなことをしてもらう値打ちもない分不相応な宴会の後に、食べ散らかした
テーブルに持ってこられた請求書なのだ。
などと考えていたフォックスの、
発病後のあるときに禁酒して以来、ほとんど毎日しているという祈りの言葉が重い。
神様、自分では変えられないことを受け入れる平静さと、
自分に変えられることは変える勇気と、
そしてそのちがいがわかるだけの知恵をお与えください。
まいりました。