あいつは、ダメだ、と思った。

あいつは、ダメだ、と思った。
あいつは、もう、ダメだ。
あいつは、もともと、ダメだ。


佐藤多佳子の小説「一瞬の風になれ」より。
主人公の新二の、親友・連への失望と怒りの表現。
エスカレートしてゆく感情を、コミカルに、なんと巧みにあらわすものよ。


全3巻、3か月連続刊行、が終わったので
もうだいじょうぶと思って手元の2冊を読み始めたら、とまらない。
2巻めを読み終えそうになってあわてて本屋にいくと、3巻が1.5倍の厚さでにやり。
それもあっという間に読み終えてしまうのだった。
氏の名品「しゃべれども しゃべれども」と比べてはいけない。
しっかり笑い泣きさせていただきました。


タイトルはちょっとだけ中味とずれてて青みもつよいか、とは思う。
「風になる」という手垢な言葉より、たとえば2巻の帯にも使われていた
「体が飛ぶ」方面の比喩を昇華させてほしかったなあ。


・バスの中で陸上部員がうたった奥田民生「イージューライダー」。…ジャスト選曲!!